INCJの中尾泰久専務執行役員は、JOLEDについて、「ソニーとパナソニックが有している、有機ELに関する研究開発機能の統合を、JOLEDという会社を作る事で実現しようというもの」と説明。
経緯について、INCJの谷山浩一郎執行役員マネージングディレクターは、「有機ELは以前から“可能性がある”と言われていたが、事業化がなかなか難しく、どうしたら事業化できるのかと業界関係者との間で話を進める中で、皆で力を合わせ、我々INCJも一定のリスクを負担しつつ、事業化していこうという考えに至った」という。
さらに谷山氏は、「日本にあるディスプレイ、装置、材料メーカーが垣根をとりはらい、皆で壁を越えていく事がブレイクスルーの鍵になる。日本中の装置と材料のノウハウを結集する事が重要。(官民出資の投資ファンドである)中立的な我々INCJがやることが成功の秘訣だろうと考えている。有機ELは難しい技術であり、一定のリスクを許容できるお金を合わせて使う必要があるという事からも、我々がやることになった」という。有機EL関連技術の海外流出を防ぐという観点については、「当然考えてはいるが、あくまで副次的なもの」とした。なお、JOLEDの資本金は非公表。
JOLEDでは具体的に、ソニーとパナソニックが持つ有機EL成膜技術、酸化物半導体技術、フレキシブルディスプレイ技術などのリソースを結集させる。そこに、JDIが培ってきたディスプレイ技術を融合させる事で、有機ELディスプレイ分野におけるリーディングカンパニーを目指している。ソニーとパナソニックはそれぞれ、有機ELディスプレイパネル事業に関する人員や資産(装置や関連特許含む)を、吸収分割により、JOLEDに承継させる予定だ。
JOLEDが開発の主要ターゲットとしているのは、10型や12型といった中型以上のタブレットやノートPCで利用する、中精細な有機ELディスプレイ。その理由として谷山氏は、「有機ELの特徴を活かしたアプリケーションは何なのかを関係者と探る中で、液晶と比べ、バックライトが要らず、電流を流せば自発光する事だという考えに至った。液晶と較べて軽くて薄い。特に軽くなる事が重要」だと指摘。
「(タブレットやノートPCでは)各社が軽量化するため、筐体を炭素繊維にしたり、HDDのカバーに穴を開けるなど、多大なコストをかけている。有機ELを採用する事で、軽量化は相当効率的にできる。10型のタブレットでは130g、12型では230g程度は軽くなる。こうした有機ELの強みを活かしてやっていきたい」という。
なお、ターゲットはあくまで中型以上の中精細ディスプレイで、テレビ用の有機ELの開発は予定されていない。谷山氏は、「やはり新しい技術を世に広める事を考えると、一定程度の“価格のプレミアム”がとれるアプリケーションから手掛けるべきだ。製造コストに占めるディスプレイの比率、シート単価などを見た上で、最適なアプリケーションは“テレビではない”と判断している」とする。
なお、中型以上の中精細ディスプレイを開発するJOLEDに、小型の高精細ディスプレイを得意とするJDIが協力している理由は、主に“タッチパネル技術のため”だという。「ノートPCもタブレットでも、タッチパネルの技術はどうしても必要になってくる。そこでJDIに活躍して欲しい」(谷山氏)。